「はい、よろしいですよ。たぶん、福井まで大丈夫だと思います」
「ありがとうございます」
列車が福井につく頃です。
先ほどの車掌さんが歩いてきました。
私のそばを通るとき、ニコッと笑ってこう言いました。
「大丈夫でよかったですね」
私は一瞬、なんのことを言われたのかわからなくてポカンとしていましたが、二、三秒たってから「あっ、そうか!」と気づきました。
車掌さんは「この席に誰も来なくてよかったね」と、言ってくれたのです。
なんという優しい車掌さんなのでしょうか。
お客の身になって、そのことを一緒に喜んでくれたのです。
後ろ姿に思わず頭を下げ、大きな声で「ありがとうございました」と言いました。
心なしか、とてもきれいな後ろ姿に見えました。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ