同じことをいうのに言葉をかえては、子犬は混乱するばかり。
しかること・ほめることのしつけをさらに具体的にいうと、主人の言い付けの"イケナイ""ヨシ"を分別させ、それぞれに従わせることです。
この"ヨシ""イケナイ"のしつけは、その行為がなった直後に行います。
犬が覚えやすいように、"イケナイ"なら、同じ言葉の「イケナイ」で通し、「いけません」とか、「よくない」などと、他の言葉は使いません。
犬の行為が意にかなったときの「ヨシ」はやさしく言い、さらに体全体をやさしくなでてやります。
悪いことをしようとしたり、また、してしまったりしたときの「イケナイ」はきつく言い、それでもきかない場合は、その犬の体力や性格に応じ、加減した力で顔を平手で打ちます。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
家族の総意で家庭に迎えた犬にしても、だれか一人、主にその犬の面倒を見る主人とか主婦とか、または男の子とかがいるでしょう。
犬は、その人を主人、あるいは責任者と見なし、特になついているはずですから、"ヨシ""イケナイ"に始まる日常必要なしつけは、まずその責任者がします。
もちろん、他の家族も無関心ではいず、責任者のしつけを助成するつもりで犬に接します。
家族全員で協力してしつけにあたることも結構です。
しかし、みんながそれぞれの好みで臨むと、犬は混乱するばかりです。
したがって、この場合は、教え込むテーマと用語とを統一し、一つ一つの事柄を完全に覚えさせていきましよう。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
犬に、希望する動作をさせるためのサインには、(1)聴覚(2)視覚(3)触覚に訴える三種類があります。
(1)は声のサインです。
犬に一定の言葉を覚えさせ、その号令で、希望する動作をさせる合図です。
(2)は見せるサインです。
例えば、右手の人さし指を高く上げ、"スワレ"の姿勢をとらせる合図です。
(3)は触発のサインです。
例えば、犬の腰を軽くたたき、その刺激で"スワレ"の姿勢をとらせる合図です。
サインは、単純な言葉または身振りで示します。
例えば、声のサインの「コイ」も「オイデ」も意味は同じですが、犬には一語のアクセントによる判断しかつきません。
ですから、サインは一事一種に統一します。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
犬に、希望する動作をさせるには、声のサインと見せるサインとを併用することが効果的です。
一般に用いられている両方のサインには、マテ犬の鼻先を右の手でふさぐ。
モテその物を指さし、くわえさせる。
ダセー犬の口元へ手を出し、くわえている物を手の上に置かせる。
などがありますが、これらのいろいろなサインは、お宅の愛犬に合わせて創作するとよいでしょう。
よその犬とは異なる独特のサインを習得させると、一層しつけが楽しくなります。
この場合、言葉数はできるだけ少なく、また身振りも短く単純にして、犬にわかりやすくすることが大切です。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
●ヨシ
犬の基本的なしつけで第一に挙げられるのは、ほめ方の"ヨシ"です。
これは、例えば"ダセ"のサインで、くわえていた物を渡すことを覚えたときなどに用います。
「ヨシヨシ」とほめながら、なお、犬にほおずりしたり、のどなどをなでてやったりしましょう。
犬は人間以上にほめられることが好きですから、一層素直に、ただちに言い付けに従うようになります。
●イケナイ
これは、しかり方です。
怒るのではなく、悪い行為を止めるしつけです。
ほめ方とは逆に、「イケナイ!」と厳し
く言い、場合によって鼻先や顔を平手で打ち、痛い思いをさせます。
●スワレ
動きを起こす前の待機の構えまたは平素の姿勢である基本的な姿勢をとらせるしつけです。
このすわらせ方にはいろいろありますが、その一つを述べますと、まず犬に向かい、右手を高く上げて注目させ、「スワレ」と声のサインを送ります。
同時に引きひもを持った左手を上げ、犬の首に若干の刺激を与えます。
こうすると、犬は自然にすわります。
その姿勢になったら、すぐに「ヨシヨシ」とほめます。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
無茶苦茶にほえる犬はもはや忠犬ではなく、悪癖をもつ病犬でしかありません。
このような悪癖の持ち主は、多くかわいがられ過ぎて育った犬です。
ですから、しつけの第一歩の"イケナイ"から、厳しくやり直さなければなりません。
「イケナイ」の声のサインでやめなければ、少々手荒な療法で臨みます。
たとえば、「イケナイ!」または「ヤメ!」と怒鳴るとともに、水を浴びせるとか、新聞紙を丸めた"矯正棒"で打つとかします。
さらに、犬もきらいな音のする石油の空缶などを付近に投げつけます。
この場合も、いうことをきいたら必ずほめましょう。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
すべての犬は、生後三か月たつと一年に一回、狂犬病の予防注射を受けることを義務づけられています。
このほかにも、ジステンパーや伝染性肝炎などの予防注射がありますが、犬は人間以上に注射がきらいです。
獣医師の前で必要以上におびえ、暴れようとします。
これは、正攻法で押さえつけてみても体の振動までは、止められず、危なくて注射をすることができません。
この犬を手なずけるには、まず"スワレ"の姿勢をとらせ、両手を使って犬が最も快感を覚えるのどと胸をなでます。
犬はこの快さに、次第に不安感と警戒心をなくし、うっとりして後足をばたつかせます。
この動きを目安に、背後から注射をしてもらうわけです。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
戸外で飼われている犬にしてみれば、家族の一員として迎えられながら、自分だけ家の外に置かれている日常はさみしいことでしょう。
それで、つい上がろうとするのでしょうが、かわいそうでも、この犬と人とのけじめは、はっきりつけておかなければなりません。
家へ上がらせないためのしつけ方法にもいろいろありますが、その一は、犬がぬれ縁や敷居に前足をかけたとき、「イケナイ!」としかり、くつベラか先述の矯正棒で、かけた足の先端を打ち、地面へ戻らせます。
その二の方法は、故意にドアまたは引き戸を少々開けておいて、犬が入ろうとしたとき、「イケナイ!」と制して首をはさみ、さらに鼻の付近を打ちます。
以上を繰り返してしつけます。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
外に連れ出すと、主人の向かうコースに従わず、逆に自分の望む方向に主人を引っ張って行こうとする犬がいます。
これは本末転倒で、見ていても感じの悪い風景です。
ぜひ矯正しなければなりません。
犬のこのわがまま、あるいは放縦の結果の悪癖を正すには、これも容赦のない荒療治が必要です。
手近な方法では、まず犬が勝手な方向へ引きひもを引っ張ったら、「イケナイ!」としかり、引きひもをたぐって頭上に上げます。
つまり、のどに不快な刺激を与え、わがままな行動の報いを思い知らせるのです。
他の方法には、引きひもの先に長さ一メートルほどのひもをつけておき、これをムチがわりに使ったしつけもあります。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
交通量が多く、騒音の激しい地域、中でも都心の家庭に飼われている犬は外に出たがりません。
子犬の場合はなおさらです。
成犬でも、外に出て強い犬にかみつかれたり、また車にひかれそうになったりなどの、ショッキングなめに遭っている犬は外出をきらいます。
しかし、この"出不精"も、そのまま犬の意向に任せておくと、ますます内気で臆病な犬、本来の活発性をなくした犬になってしまいます。
したがって、このようなシャイ、またはノイローゼ気味の犬は、無理にも外へ連れ出す"逆療法"で臨む必要があります。
繰り返し引き回しているうち、免疫性、さらに自信が備わって矯正されます。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ
どちらか一方の前足の「オテ」ができるようになったら、続いて教えたいのは「オカワリ」です。
これは「オカワリ」という言葉のとおり、先に「オテ」で上げた前足を元に戻し、代わりに、もう一方の前足を出す所作です。
この教え方は、まず先の「オテ」で手に載せていた犬の前足を放し、「オカワリ」といって、別の前足の前へ手を出します。
犬はしばらくの間、惰性で以前に出していた前足を出しますが、「チガウ」といって首を横に振ってみせ、手を引っ込めて受け取りません。
これを何べん繰り返してもわからないようでしたら、出した以前の前足を軽くたたいて下ろさせます。
そして、以前の前足とは別の前足をつかみながら、「オテ」を「オカワリ」に言い換えて教えます。
犬やペットの専門家・高橋ナツコ